2011年10月25日火曜日

番外編〜まちづくりイベント:西小山ミステリーツアー2011

 このブログは、日本全国のいろいろな地域で作られている地域産品にフォーカスしたものですが、今回は番外編として「まちづくりイベントのケーススタディ」をアップします。
 というのも、地域産品の製造販売をしている人と接していると、多くの人が地域のキーマンとして“まちづくり”に関わっておられるという印象があり、そういう方々にぜひ読んでもらい、インスパイアーしていただきたいと思ったからです。
 また、商品とイベントというカテゴリーこそ違いますが、プランニングという点では同じなので、地域産品開発に新たな視点を提供できるのではないかとも思いました。


 イベントは、東京都の品川区にある東急目黒線西小山駅近辺で行われた「西小山ミステリーツアー2011」です(イベントに参加したのは10月23日でした)。


ツアーのパンフレット
ポイントが書いてあるツアーマップ
マントを着たガイドの方
ツアーの参加者にポテトフライを無料で提供
じゃんけんコーナー

ポイントに張ってあった、このあたりの昔の写真(川が流れていた花街だったそうです)

概要
 参加者は、受付でもらったミステリーマップを見ながら、18カ所あるポイントを探してキーワードを見つけ、ミステリーマップについているクロスワードを解き、正解者は景品抽選会の参加権を得る~というウォーキングイベントです。
 ツアーの参加者は親子連れやカップルが多く、とても盛り上がっていました。また、一人で参加している中高年男性やお友達同士で参加しているお年寄りが多かったのも印象的でした。
 各ポイントにガイド役のボランティアスタッフ(中央大学の「まちづくり・細野研究室」の学生さんだそうです)がいて、謎解きのヒントや道順を教えてくれるので、ミステリーの難易度は高くはなかったです。

まちづくりプランニングの参考になりそうなキーワード
【お接待マインド】
 ポイントになっているお店がプレゼントや飲み物・食べ物を参加者に無料で提供し、お店の人と参加者が西小山の地域やこのイベントについて会話をかわしていました。その様子を見ながら、これは何かに似ているなと思っていたのですが、一番ぴったりくるイメージは四国巡礼のお接待*でした。
 ミステリーツアーは四国八十八カ所を巡る巡礼、お遍路さんはイベントの参加者、ポイントのお店の人は四国の地元の人、という構図です。
 西小山の地元の人のおもてなしを受けて、イベントの参加者はこのミステリーツアーに対してきっといい印象を持ったと思います。そして、リピーターになって次回も参加されるのではないでしょうか?過去の概要を見ると、09年の募集人数は1500名でした。今年は3000名です。きっとお接待効果でリピーターが増えているのだと思います。
 ちなみに、【お接待マインド】というキーワードを思いついたとき、東京マラソンでバナナや水をランナーに渡しているボランティアの方々のイメージとも重なりました。オリンピックのボランティアもしかり。お接待マインドはイベントの大小に関わらず、参加者に好印象を持っていただく秘訣の一つだと確信しました。
※お接待:(四国八十八箇所の)道中、お遍路さんに対して地元の人々から果物や金品、善根宿など、お接待または接待とよばれ、食べ物や飲み物、手ぬぐいやときには現金を渡す無償の提供がなされる伝統がある。これに対し、遍路は持っている納札(おさめふだ)を「お接待」してくれた人に渡すことになっている。こうした文化のおかげで、昔は比較的貧しい人であってもお参りができたといわれる。(wikipedia)

【挑戦】
 世界各地の民族が持っている神話には共通のストーリーやファクターがあり、「挑戦」というキーワードもそのファクターの一つだといわれています。ハリウッドの映画制作会社は神話分析によってストーリー作成のノウハウを構築しており、「スターウォーズ」はその典型的なケースです。
 このイベントも、ミステリー=クロスワード解きは「挑戦」そのものであり、参加者は子供からお年寄りまで、おおいに楽しめたと思います。実際、道ですれ違う人の表情はとても楽しそうでした。また、ツアーの要所要所で、いろいろなゲームに参加できる仕掛けがありました。ゲームといっても、射的やじゃけんなどささやかなものですが、ミステリーツアーに参加しているという一体感があって、実際にやってみるとそれなりにテンションがあがりました。
 いろいろなイベントのプランニングをする際、企画側からの情報提供や物販も大事ですが、参加者に何らかのカタチで「挑戦」する機会を提供することも、盛り上がりを演出するうえでとても大事だという感想を持ちました。

【コミュニティレガシー】
 いくつかのポイントには昔の街の様子を知ることができる写真が貼ってありました。あるポイントではガイドの方から「西小山にはむかし花街があり、この料理屋さんはその時代から続く老舗料亭だった~」というエピソードを教えていただきました。普段よく見なれた駅前商店街の風景も、こういうエピソードを聞くことで風情が感じられ、印象がガラリと変わります。映画館や先代の林屋三平が舞台にあがった演芸会館もあったそうです。
 地域の歴史的な資産(コミュニティレガシー)がコンテンツになっているのは、世界遺産や最近話題になっているジオパークなどがその典型ケースですが、NHKの「ブラタモリ」もレガシーを使って今の街を別角度で楽しむ構成になっていて、東京の街のこの坂が江戸時代はこんなふうだった〜ということを視聴者に再現映像で見せたりしています。つまり、コミュニテレガシーというのは目では見えない地域の姿を想像するエアーARのアイテムのようなものであって、“地域の印象を多層的に組みかえる”という点ではとても有効なものだと思います。

以上の3つが、私がイベントに参加して実感したまちづくりプランニングに参考になりそうなポイントでした。


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2011年10月17日月曜日

塊炭飴 (北海道赤平市)


対象商品
「塊炭飴」(北海道赤平市)
 赤平市がかつて産出していた塊炭の形と色調、光沢になぞらえた飴菓子。原料は北海道特産のビート糖とカッシャ(ニッキ)。
製造者:石川商店

商品コンセプト
 見た目、味、ネーミングなどの印象から、この商品のコンセプトは「無骨な男が好む飴」だと思いました。
 塊を砕いたままの石ころのような形状、女性や子供が好む甘さ一辺倒の味とは違うニッキのきいたパンチのある味、「塊」「炭」というお菓子らしからぬ無愛想なネーミング…などから、人に媚びず勤勉で実直でまじめなキャラクターを連想します。戦後の高度経済成長を支えたのは“こういうオトコたち”だったのでしょう。とにかく、リアルなユーザー像が浮かぶ商品だと思います。

プロモーションをするとしたら
 2006年にポッカコーヒーが「オッサン。」というキャッチコピーでキャンペーンをしていました。タレントに柔道家の吉田秀彦さんを起用し、メッセージは「まっすぐに生きる男たちへ。あなたたちこそカッコいい!」でした。
まさにこのターゲットとメッセージが「塊炭飴」のプロモーションのヒントになると思います。
 例えば、「無骨な男」のイメージターゲットを、いわゆるガテン系の現業職の人々と設定すると、そのターゲットのタッチポイント(ブランドとユーザーの接点)でのサンプリングやポスターなどでの露出が有効だと思います。
 例えば、(イメージとしての)駅裏のスナック街というタッチポイントにフォーカスし、カラオケーメーカーとタイアップするプロモーション(サンプリングやステッカー等)…などのアイデアが浮かびます。

地域産品の商品開発にあたって参考になる点
 「塊炭飴」は、このブログで取り上げた「コウノトリ育む米」「よいとまけ」などと同様に、地域の個性や資産をダイレクトに商品に反映させているケースだと思います。
 「この地域産品は、どこの地域のどのような商品なのか」という流通やユーザーの問いかけに対して、商品を提示するだけですぐにわかっていただけることが、この種の商品の大きなメリットだと思います。類似商品、競合商品が多い地域産品マーケットでは、これは大きなアドバンテージになるのではないでしょうか。
 また、コンセプトを人間の性格やキャラクターに設定した場合、ターゲットの設定とそれにそったプロモーションのプランニングがスムーズにできることもわかりました。逆の発想をすると、今注目を集めている人のパーソナリティをあぶり出してコンセプトメイキングを行い、それにあった製品開発(素材や製法を組み合わせるなど)も大いにありえると思いました。


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2011年10月8日土曜日

バンビ ミルクキャラメル (北海道小樽市)


対象商品
「バンビ ミルクキャラメル」(北海道小樽市)

商品コンセプト
 この商品のコンセプトは「小学生の遠足の時に食べたおやつ」だと思います。
 米菓やキャンディが日常のおやつであるのに対して、キャラメルやチョコレートには“特別なときに食べるおやつ”というイメージのDNAがあるのではないでしょうか。遠足というのは“特別なとき”であり、また“野山”“駆け回る”などのイメージもあるので、子鹿のイメージと重なって魅力的なコンセプトになっていると思います。
 またチョコレートは今も新しい商品がどんどん出て鮮度の高いカテゴリーであるのに比べて、キャラメルはどこか懐かしさを感じるカテゴリーなのではないでしょうか。そのイメージが、“小学生”という懐古イメージに結びつくと思いました。
 暖かい春の日の遠足で、友達と一緒に芝生の上に座ってお弁当を食べた後、ちょっと柔らかくなって紙にくっつきかけたキャラメルを頬ばったときのほのかな甘さ…というシーンとシズルが浮かびます。

プロモーションをするとしたら
「毎日北海道記者和田浩幸のサブノート」というブログには、ウォルトディズニーから商標を得て発売してヒット、チクロ騒動の影響で発売中止、30数年ぶりに復刻し爆発的な人気に、原油高によりメーカーが倒産、大手メーカーのブランド買収を従業員が阻止、情熱にかき立てられた取引先の菓子卸業社が製造工場を建設しブランドを継承~というブランド復活のエピソードが書かれています。この物語こそがプロモーションの素材になると思います。人が見えるブランドストーリーは、ユーザーのココロをつかむ最大のツールです。

地域産品商品開発の参考になる点
 「バンビ ミルクキャラメル」には「ノスタルジックキャラクター遺産」という価値があると思います。
 この商品の「バンビ」のようなノスタルジックなキャラクターは、大人だけでなく子供も含めた多くの人をひきつける魅力があります。また、遺産とは長い年月を経ても変わらない普遍的で魅力的な価値を、世の中に広く提示する装置のことだと思います。だからこの世界遺産やジオパーク*に注目が集まっているのでしょう。

 都会が次々と新しいコンテンツを生む場所であるのに対して、ローカルはこういったノスタルジックなコンテンツを綿々と作り続けている場でもあると思います。そういったコンテンツを掘り起こし、新しい息吹を吹き込むことで魅力的なブランドが必ずできるという確信が持てました。

*ジオパークとは地球科学的に見て重要な自然遺産を含む、自然に親しむための公園。日本ジオパーク委員会 では「大地の公園」という言葉を使っている。(wikipedia)



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※その他画像







2011年10月3日月曜日

海のくんせい屋 (高知県室戸市)




対象商品
海のくんせい屋 (高知県室戸市)

商品概要 ※商品説明等を引用
 獲れたての鮮魚を衛生管理されたクリーンルームで調理し、海洋深層水と塩を使って燻製にしたもの。食べやすいようにスティック状に加工されている。無添加で保存料不使用。

製造者 株式会社マリンファーム
価格:15g 158円(税込み)

品質(試食の感想)
 くんせい独特の香りと濃厚な味にインパクトがあります。食感は、最初は歯ごたえがあるものの、食べ進むうちにホロリとくだけていく感じがおもしろいです。

商品コンセプト
 この商品の魅力はシイラ(マヒマヒ)という“珍しい魚のくんせい”という点にあると思います。
 ユーザーがこの商品を店頭で見たら、「マヒマヒ?へぇーなんだろう」「おもしろそう、ちょっと食べてみよう」「飲み会に持って行ったらウケそう」というポジティブな感想を持つのではないでしょうか。
 酒の肴の商品開発では、健康や製法に加えて話題づくり(珍しさ)も大事です。その考え方にこの商品はあっていると思います。

 今後、こういった珍しい種類の魚のくんせいが増えれば、「くんせいカテゴリー」が活気づくでしょう。果物や野菜カテゴリーは、新種・海外物・国内のご当地物などのいろいろな品揃えが百花繚乱で楽しいです。そういった活気のあるカテゴリーには自然に消費者の目が集まるので、例えば豆苗や食用ホウズキなどの新顔がすぐに話題になります。
 この方程式が「海のくんせい屋」にあてはまると思います。「くんせいカテゴリー」全体で深海魚などの“聞いたことはあるけど食べたことはない魚”を商品化していくと活気づくのではないでしょうか。

ネーミング
 「海のくんせい屋」はブランドの傘にあたる屋号的な位置づけでしょう。
 マヒマヒという名前にはインパクトがあるので、それを前面に出す考え方を探った方がいいと思います。実際、売り場ではメジャーな魚が多かったので、マヒマヒは目立っていました。

パッケージ
 色使いやレイアウトにセンスがあって、あかぬけていると思います。
 今後の方向性として、上記のようなコンセプトでいくとしたら魚の写真などを使って珍しさや面白さにフォーカスすると目をひくデザインになると思います。

プロモーション
 FacebookやTwitterの普及で、珍しいモノや面白いモノを探して紹介するソーシャルコミュニケーション(キュレーション)が盛んになっています。このようなコミュニーションにフィットする話題性をしかけると効果があるのではないでしょうか。
※たとえば、「マヒマヒ食おうぜ!」というブログにあった、マヒマヒくんせいのチャーハン というメニュー提案など、おもしろいと思います。

参考になる点
 魚は食肉よりも多種多様な種類があるカテゴリーです(マーケティング用語で言う「バラエティシーキング」)。このケーススタディで、魚のくんせい商品の本質は、魚の多種多様な種類を食べる楽しさを提供することだと気づきました。
 例えて言うと、「居酒屋のメニュー選びの楽しさを食卓で再現する」という考え方です。不況の影響で家飲みが定着している昨今、「うち居酒屋」の商品開発に大きな可能性がありそうな気がしてきました。
(今のトレンドでは、「うちカフェ」などの「うち~」シーンは、要注目のシーン)

(2011.7.31 東京都中央区銀座「まるごと高知」で購入)



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