2011年9月12日月曜日

よいとまけ (北海道苫小牧市)






商品概要

 ハスカップジャムを表面と中に巻き込んだロールカステラ。初代社長の小林正俊が、故郷である苫小牧を代表する“土地に根ざした銘菓”をつくろうと決意し、「原野に自生しているハスカップ」「王子製紙の作用現場から聞こえてくる労働者たちの『よいとォまいたァ』のかけ声」「紙の原料となる丸太」の3つの要素を盛り込み、苦労の末にロールカステラの外側にハスカップジャムを塗り込んだお菓子として作り上げ、昭和28年に発売した。

製造者 株式会社三星

価格 1本:16.5cm(7切れ) 525円



品質(試食の感想)

 口に含んだ直後はハスカップの素朴な酸味が飛び込んできますが、次第にロールカステラの甘みが広がり、やがて2つの味が口の中でハーモニーを奏でます。酸味と甘みが互いをバランスよく引き立てているという印象です。コンビネーション、味のかけ算、10代の頃の甘酸っぱい思い出といったキーワードが浮かびます。
 食品以外のモノに例えるとしたら、ミュージカル「美女と野獣」です。
→美女:ロールカステラ、野獣(野性的という意味で):ハスカップ

コンセプト
 「よいとまけ」は北海道を代表するお菓子として有名ですが、それは明治創業という長い伝統もさることながら、商品コンセプトに強い物語性があるために多くの人に愛され続けているのだと思います。
 その物語性とは何でしょうか。
 まず第一はノスタルジー性です。すなわち、商品の向こう側に製紙工場から聞こえる力強い声や山積みになっている太い丸太のイメージが浮かび上がります。この五感をくすぐるノスタルジックさが大きな特徴でしょう。
 もうひとつは、開発者の情熱がエピソードとして残っているという点です。地域産品に限らず、あらゆるロングセラー商品を生む条件の一つとしてこのような“開発者の情熱”があげられます。例えばカップヌードル、味の素、カルピス、(バイクの)スーパーカブ、ウォークマン、コカコーラ、ケンタッキーフライドチキン、(パソコンの)マッキントッシュなどがっそれにあたります。
 以上のようなノスタルジー性という縦糸と開発者の情熱という横糸が紡ぎ出す物語性がこの商品の大きな魅力となってコンセプトを築いていると思います。

ネーミング
 力強さと無骨さを感じさせる響き、素朴さや郷愁をかきたてる土着っぽさなど、甘いお菓子とはかけ離れたギャップがインパクトをもたらしています。
 商品の物語性を忠実にあらわし、人の口から発せられたままの素っ気ない言葉であることが、いい味わいとなっています。

パッケージ
 大きく扱った商品のビジュアル、素朴な風情のロゴ、ハスカップを連想させるカラーリングなど、やや地味ながら安定感を感じるデザインです。よくある“伝統イメージが醸し出す古くささ”が足を引っ張っている、ということはないと思います。

プロモーション
 「日本一食べづらいお菓子」という“つかみ”が注目を引くキャッチーな要素となっています。店頭のPOPやHPのキャッチなどに書いてあると、もっと注目を浴びるでしょう。
 個人的には、老化防止などのハスカップの健康効果を訴求することはコミュニケーションロスだと思います。同様の健康訴求をしている商品はヤマほどありますし、食べる人はそういう期待をカケラも持っていないでしょうから。
 ジャストアイデアですが、商品名からの発想として、“全国の労働中のかけ声(方言)”の募集と発表(ネットやパッケージ)などもいいと思います。(ex.第一生命のサラリーマン川柳、おーいお茶の新俳句大賞のような公募型PR)

参考になる点
 地域独自の文化の中からノスタルジー資源といったものを掘り起こし、商品に組み込めそうな要素を洗い出すことはとても大事な作業であることがわかりました。
 また、コンセプトに五感を刺激する要素を持ち込むこと、何らかのギャップがインパクトをもたらすこと、という2点が重要であることもわかりました。


(2011.7.31 東京有楽町の交通会館内 北海道どさんこプラザで購入)



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