※写真は左から、クリーム、もちあん、塩キャラメル
商品概要
こしあん、つぶあん、クリーム、チョコ、しろつぶ、もちあん、塩キャラメルなどの餡を小麦粉の生地で包み込んで焼き上げたもの。
製造者 桑田屋
価格:こしあん(85円)、つぶあん(85円)、クリーム(85円)、もちあん(95円)、塩キャラメル(95円) ※各1個
品質(試食の感想)
第一印象は、一口サイズながら十分な食べごたえを堪能できるというものです。
特徴は、饅頭のふわふわした食感とは正反対の凝縮して詰め込まれた餡、そして薄いけれどもしっかりした弾力で歯ごたえを楽しめる生地の2点です。餡は手づくり感を感じさせるホッとする味わいです。
コンセプト
ぱんじゅうとは、広辞苑によると「ぱんと饅頭とを折衷した菓子」とありますが、実際はパン生地というよりもWikipediaの「今川焼きから派生した半球型、釣鐘の形状をした焼き菓子」という説明の方が納得がいきます。
いずれにしても、饅頭のようで饅頭ではなく、あんパンを連想するがあんパンの味ではない、今川焼きの味のようだがちょっと違う……つまり、それらの中間の味という言い方が一番合うと思います。
この商品の由来を見ると「小樽の文明開化の中から生まれ~パンがまだ高価な食べ物だった頃~西洋文化への憧れとともに人気になった。~」とあり、伝統的な和菓子に通じるものを感じさせます。一方で、形状や味、作り方や売り方などから駄菓子のイメージも醸し出しています。
以上のことから考えると、何とかのようで何とかでない=「無個性の個性」という商品価値が根底にあると思います。これは決してネガティブなことではなく、代わりのいないマルチユーティリティープレイヤーといえるでしょう。
今後、より多くのお客様に受け入れていただくには、エッジのどれかを立たせればいいと思います。エッジは明治やレトロといった伝統・歴史性、縁日や下町といった庶民性、地域性、食感と味、餡のバラエティー性等々たくさんあります。もしも反応がかんばしくなければ、そのエッジはひっこめて、違うエッジを立てればいいだけです。土台がしっかりしているのでブレることはないでしょう。これが「無個性の個性」であることの強みだと思います。
ネーミング
誰でも、はじめて聞いたときは「パン?まんじゅう?」という反応をするでしょう。
この「?」が、商品を覚えてもらうことの「つかみ」として機能すると思います。より関心を持ってもらうためには、「○○のぱんじゅう」というショルダーコピーのようなものが必要かもしれません。どのような方向性にするかは、エッジ次第です。
プロモーション
「無個性の個性」だけに、ジャストアイデアでいろいろなプランが考えられます。
例えば、
・「小樽の~」「文明開花に生まれた~」というキャッチコピー開発
・ぱんじゅうを焼いている庶民的な職人さんのキャラクター化
→明星チャルメラのイメージ
・商品に顔の似顔絵を描いたキャラクターづくりとそのシンボル商品化
・「新商品は、中にどんな餡を入れたらいいでしょう?」というアイデアコンテスト
等々
ただし、今後の方向性(エッジ)にそったものでないと単発企画で終わる危険性もあります。
参考になる点
通常、商品開発を行う場合、どうしても特徴を絞り込みたくなります。また、そうしないと商品として成立しないことが多々あるのも事実です。
にもかかわわらず、「ぱんじゅう」のような商品が魅力的に思えるのは、開発過程における「あいまいさ」をポジティブに置き直すことによって、結果的に新たな世界が開けたということなのでしょう。その意味で、こういう開発姿勢や考え方もあるのだということがわかりました。
(2011.9.2 京王百貨店新宿店「大北海道展」で購入)
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