対象商品
シャイニーアップルジュース「金のねぶた」「銀のねぶた」 (青森県黒石市)
「金のねぶた」は【酸味スッキリ】。厳選したふじと契約栽培の紅玉をブレンドしたキレが特徴。
「銀のねぶた」は【完熟まろやか】。香り豊かな王林と厳選ふじをブレンドしたまろやか風味が特徴。
製造者:青森県りんごジュース株式会社
商品コンセプト
この商品のコンセプトは「双子のジュース」だと思います。
食品ブランドの場合、一つのブランドで味や素材違いのものをラインアップすることはよくあります。ただ、それは「こういう別の商品もありますよ」ということをユーザーに提示しているだけで、ブランディングとして有効に機能してるわけではありません。
その点、この「金のねぶた」「銀のねぶた」は、頭に「金の~」「銀の~」とつけたことによって、互いに結びつきの強い双子的商品であることをはっきりと表明しています。双子的商品とは、他の商品でいうと「マルちゃん 赤いきつねと緑のたぬき」が最も近いと思います。「赤いきつね」は熱い=赤いというイメージでネーミングされ、「緑のたぬき」は赤の対照の色としてつけられたそうです。つまり、当初からペアであることを意識し、色の記号を用いて双子イメージの訴求とインパクトをねらったわけです。
実際、商品が売り場の棚に並んでいるとしたら、単体よりも複数の方が目立つのは当然ですし、複数でも単なるラインアップよりは双子的な見え方の方がアピール力は強いと思います。そういった意味で、この商品から読み取れるコンセプトは「双子のジュース」だと思いました。
また、「金のねぶた」「銀のねぶた」は金・銀というネーミングとデザインで高品質感を醸し出しています。例えば、メジャーな商品ではサントリーの「金麦」、サッポロビールの「金のオフ」、セブンイレブンのPB(金の海老チリソースetc.)、ミツカンの納豆(金のつぶ)やドレッシング(金のごまだれ)などがあり、どれも「金」の世界観で高品質感を訴求しています。「金のねぶた」「銀のねぶた」も同様に“品質のいい、おいしいリンゴジュース”という商品価値を、金と銀の世界観で表現していると思います。
さらに、この商品からは童話「金の斧、銀の斧」のイメージも浮かびます。童話の内容云々ではなく、言葉の響きから童話そのもののイメージが商品に付加しているということです。童話というイメージからは“民話”→“ふるさと”という連想がふくらみ、“ふるさと”の郷愁を感じさせる地域産品ならではのイメージづくりに役だっていると思います。こういったイメージは青森生まれのリンゴジュースという商品の出自によるものであり、大手ではなかなかできないことだと思います。
プロモーションをするとしたら
この商品を飲んだとき、金と銀の両方ともそのおいしさにちょっとびっくりしました。「そのまま食べてもおいしいりんごだけを使って、りんご本来の味わいをそこねないように丁寧にジュースにしている~」というのが感想です。これは私だけでなく、一緒に飲んだ仲間もおいしさを絶賛していました。
プロモーションにおいては、この点に集中して訴求することが効果的だと思います。構造でいうと、“おいしさ”ד金・銀”です。例えば、売り場のPOPに「金はうまい、銀もうまい」といった味訴求のコピーを載せるというアイデアです。これはあくまでも一つのアイデアですが、“おいしさ”に特化したプロモーションを“金・銀”の記号を用いて行うというのが正攻法プロモーションだろうと感じました。
地域産品開発に参考になるポイント
「ねぶた」は青森の代表的な地域資産・シンボルです。例えば、青森のアンテナショップに行くと、「ねぶた」を用いたネーミングやパッケージデザインの商品が数多くあり、それらの商品が棚にたくさん並んでいると競合状態になっていて商品の違いがわかりにくくなっています。その点、「金のねぶた」「銀のねぶた」は“双子的”な記号が付加されているので類似商品よりも目立ち感があります。
地域産品には、その地域のシンボルや資産をパッケージやネーミングに使ってブランディングをしているものがたくさんありますが、「金のねぶた」「銀のねぶた」のように他の何かの記号を付加することで類似商品との差別化をすべきだと思います。
一般的に、商品開発のプロセスにおいては、たくさんのアイデアを一定の尺度でふるい分けして一つのコンセプトに落とし込むわけですが、複数の優良なアイデアを無理矢理ふるいに落とさなくても、“双子”のようなキャパのあるコンセプトを受け皿にすることでパワーのある商品を考案できることに気づきました。
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